アメリカミズーリ州で3枚の看板(スリーボード)を出したことで主人公の人生が変わる。
映画『スリー・ビルボード』あらすじを考察。
ネタバレが含まれます、ごめんなさい~
娘を理不尽な暴力で失った主人公と捜査が進まない街の警察との衝突。
それに留まらない人間の不機嫌の連鎖。
「犯罪にハッピーエンドは訪れないのか?」
映画『スリー・ビルボード』感想もお伝えします。
スリー・ビルボード:「怒りは怒りを来す」考察と感想が気になる、、、
※人間の不機嫌の連鎖が生み出す怒り。
【考察と感想】はあらすじの後に書いています。
先に読みたいときは、後半へ進んでご覧ください。
映画『スリー・ビルボード』受賞
【受賞】
〈第74回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門〉
受賞
●脚本賞:マーティン・マクドナー
〈第90回アカデミー賞〉
受賞
●主演女優賞:フランシス・マクド―マンド
●助演男優賞:サム・ロックウェル
ノミネート
●作品賞、作曲賞、編集賞、助演男優賞(ウディ・ハレルソン)
〈2018年日本外国映画における複数の映画賞〉
●第1位に選出されました
映画『スリー・ビルボード』簡単なあらすじ(ネタバレ)
※あらすじ①②結末③をお読みください
『スリー・ビルボード』あらすじ(序盤)
【あらすじ序盤】
舞台はミズーリ州エビングの田舎町
娘アンジェラをレイプされ、焼死体となって亡くした母ミルドレッドは
7か月経過しても捜査が進まないことに腹を立てており、
3枚の看板を設置した。
- 娘がレイプされ、焼き殺された
- 犯人逮捕はまだ?
- ウィロビー署長なぜ?
街の人々は警察署長を尊敬しており、ミルドレッドは街の中で居場所を失う。
署長を慕う、若い警官ジェイソンは怒りを露わにし、様々な嫌がらせをした。
ウィロビー署長は、捜査に全力を尽くしていることと、自分がすい臓がんで余命が少ないことを話す。
だが、ミルドレッドは、それは承知だと答えた。
元夫チャーリーさえも看板には反対した。
『スリー・ビルボード』あらすじ(中盤)
【あらすじ中盤】
ウィロビー署長が病気を苦にして自殺をした。
人々はミルドレッドの看板が署長を追い詰めたとして、彼女はますます街の中で孤立する。
なんと、怒り狂ったジェイソン警官は広告会社の責任者レッドを暴力で脅し、二階から突き落とした。
しかし、ウィロビー署長の後任アバークロンビー署長がこの犯行を目撃し、ジェイソンは解雇された。
その頃、ミルドレッドはウィロビー署長の手紙(遺書)を受け取った。
私の死は、あなたの広告とは関係がない。
あの看板は、名案だった。
翌月の広告代は自分が払う。
そして、ミルドレッドの身を案じ、犯人逮捕を願うと書いてあった。
(先月の5000ポンドの広告への寄付も署長だったのだろうか?)
しかしその後、あの3枚の看板に放火され、ミルドレッドは復讐を誓った。
敵ばかりじゃないと言う、新署長の言葉も耳に入らなかった。
夜遅く、ジェイソンは警察署でウィロビーの遺書を読んでいた。
「お前はいい警官になる、足りないのは愛情だ。」
手紙を夢中で読んでいて、火の手が回ったことに気が付くのが遅れ、
ジェイソンは火だるまで転がり出た。
ジェイミーが通りがかり、火の粉を消し、一命を取り留めた。
火炎瓶を警察署に投げ入れたミルドレッドのこともジェイミーが庇ってくれた。
ミルドレッドはお礼にジェイミーと食事の約束をした。
大やけどを負って入院したジェイソンは自分が大けがをさせた広告会社のレッドと同室になった。
自分がジェイソンだと知っても、オレンジジュースにストローを差して優しくしてくれたレッドに涙を流した。
ミルドレッドの家には広告の予備を持っていたジェロームが訪ねて来て、一緒に広告を張り直すことが出来た。
友人のジェイミーも手伝ってくれた。
『スリー・ビルボード』あらすじと結末(ネタバレ)
【あらすじと結末】
ジェイミーがミルドレッドの警察署放火時のアリバイを証言してくれたので、逮捕を免れ
二人がそのお礼に食事をしていると、
元夫チャーリーが19歳の彼女と入ってきた。
3枚の看板の放火はチャーリーの仕業だったのだ。
怒りが収まらないミルドレッドの言動は、ジェイミーを失望させ、
チャーリーと彼女に飛び掛からんばかりだったが、
彼女の「怒りは怒りを来す」と言う言葉を聞き、反省をするのだった。
その頃、退院したジェイソンがバーでお酒を飲んでいると、
後ろの席で9か月前のレイプ事件は俺だと言う声を聞いた。
ジェイソンは、男にけんかをしかけ、男の血液からDNA鑑定検査に送った。
そして、ミルドレッドの家を訪ね、犯人が捕まるかもしれないから望みを捨てず元気を出せと励ました。
ミルドレッドはジェイソンの態度の変化に驚いたが、お礼を言った。
その後、結果はDNAが一致せず、バーの男は娘のレイプ犯ではなかったが、別のレイプ犯であることから、
ジェイソンとミルドレッドはその男をやっつけようと意見が一致した。
ミルドレッドとジェイソンが待ち合わせ、車で男の住むアイダホに向かう。
道中、ミルドレッドは放火は自分だと告白するが、
あんた以外に誰がするんだと返された。
二人の復讐心は少し、トーンダウンし、
「やるかどうかは道中ゆっくり考えよう」
と言いながら車を走らせた。
(おしまい)
映画『スリー・ビルボード』考察と感想:怒りは怒りを来す
【考察と感想】
娘を理不尽な暴力で殺されたミルドレッドが気の毒で、怒って当然だと思いながら観ていましたが、
彼女が自分や他人に苛立ち、どんどん復讐心を募らせるのが辛く、重い気持ちになりました。
多くの人が怒りを持ち、その怒りを誰かのせいにしないと生きていけない。
そんなストーリー展開だったと思います。
ジェイソン・ディクソン巡査も同じです。
自分をコントロールできず、偏った考え方をしますが、尊敬する署長の手紙が改心するきっかけでした。
その後、入院先で自分が暴行した相手にオレンジジュースをもらい、
人を許す優しい気持ちに触れ、涙を流しました。
その1)私が一番好きなシーンはオレンジジュースのやり取りです。
広告店のレッドは、自分に大けがを負わせたジェイソンを許したのです。
自分のオレンジジュースにストローを入れ、飲みやすいようにストローの向きを変えてあげましたね。
そういえば、新しい署長からミルドレッドへの
「敵ばかりではないよ」
という言葉も温かくて好きな言葉でした。
その2)署長からミルドレッドへの手紙が良かったな~。
あの広告は名案だった!とありました。
自分を名指しで非難した広告だったのに。
来月の広告代まで出してくれ、
ミルドレッドの身を案じ、
犯人が捕まるといいな、とまで書いてあり、
娘の事件は解決しませんが、ミルドレッドも署長は立派な人物だったとことに気が付きましたね。
その前に匿名で届いた5000ドルも署長からだったのではないでしょうか?
(警察嫌いの者より)
とありましたけど、、、そんな気がします。
その3)「怒りは怒りを来す」が私にも響きました。
ミルドレッドもジェイソンも元夫のチャーリーも。
辛いのはみな同じ。
皆、怒りをどこにぶつけていいか分からず余計に怒りを募らせる。
「怒りは怒りを来す」
と言う言葉は、チャーリーの彼女が本で見たフレーズですが、
彼女はまだそんな怒りを経験したことがないようです。
そんな彼女が言うから余計にそうかもな、、、と素直に思えたのではないでしょうか?
ワインを投げつけるのかと思ったミルドレッドがその瓶を差し入れとして置いて帰りました。
ミルドレッドが許す気持ちを持った瞬間でした。
4)犯罪にハッピーエンドはないけれど。
ジェイソンが見つけた男はDNAの結果、娘アンジェラの犯人ではなかったけれど、
彼は犯人を見つけてあげたいという気持ちになったんだな~
あんなにミルドレッドを敵視していたのに。
尊敬する署長の手紙と、自分がけがを負わせたレッドの優しさがきっかけでした。
そして、その気持ちにありがとうというミルドレッドも少し許す気持ちが湧いてきたのかな。
娘が事件に巻き込まれる前にケンカ別れしたミルドレッド。
娘の犯人を見つけることで自分の後悔している気持ちから救われたい。
皆が自分を責めて、許してもらいたくて怒っている。
最後は、ジェイソンと二人で別の事件のレイプ犯人に復讐に行くという、
違う方法で怒りを終わらせようとします。
車の中でミルドレッドが、警察署を放火したのは私だと告白すると、
ジェイソンは「あんた以外にだれがやる?」
と答えます。
ああ、自分の大罪も許されていると気が付きます。
ミルドレッドの悲しみや怒りはそんなに簡単に収まるものではありません。
娘の事件は残酷すぎますから。
でも、許しに触れて変わっていくミルドレッドの心がもっと落ち着くといいな、
もっと多くの人の優しさに触れられるといいなと思いました。
最後はミルドレッドの態度が和らぎ、観ていて救われた気がしました。
「怒りは怒りを来す」
身に覚えのある言葉です。
いつも自分の頭の片隅に置いておきたいなと感じました。
『スリー・ビルボード』映画:概要・意味
【概要】
●製作:アメリカ・イギリス
●公開:2017年アメリカ
●監督:マーティン・マクドナー
●ジャンル:ヒューマンドラマ
●脚本:マーティン・マクドナー
●音楽:カーター・パーウェル
●主人公:フランシス・マクド―マンド
※ビルボード=アメリカでは屋外に設置される巨大な広告板のこと。
「スリービルボードの意味は、3枚の屋外巨大広告板」
『スリー・ビルボード』映画:キャスト
【キャスト】
●ミルドレッド・フェイズ=フランシス・マクド―マンド
(主人公・娘を事件で亡くし警察に抗議の看板を掲げる)
●ビル・ウィロビー署長=ウディ・ハレルソン
(警察署長・レイプ事件の犯人逮捕が進まず、看板で名指し批判される)
●ジェイソン・ディクソン巡査=サム・ロックウェル
(署長を慕い、レイシストで暴力的な警官)
●チャーリー=ジョン・ホークス
(主人公の元暴力夫・19歳の少女と交際中)
●ジェームズ=ピーター・ディンクレイジ
(主人公の友人・密かに恋心)
●レッド・ウェルビー=ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
(広告代理店の経営者)
●パメラ=ケリー・コンドン
(広告代理店の事務員)
●アン・ウィロビー=アビー・コーニッシュ
(署長の妻)
以上
(ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。)
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