映画『パラレルマザーズ』のあらすじ・考察・感想をお届けします～
同じ日に出産した二人の母親の運命と絆の物語。
そして、
スペイン戦争内乱で戻らなかった曾祖父や村の人々を悼みたいと奮闘する主人公。
最後に流れるエドゥアルド・ガレア―ノ氏の名言も解説します。
スペインが舞台のヒューマンドラマ、ペネロペ・クルスの演技が素晴らしい！
アルモドバル監督が再びペネロペ・クルスとタッグを組みました。
「パラレルマザーズ」映画のあらすじを簡単に！
【あらすじ】①②③と結末をご覧ください。
娘を同じ日に生んだジャニスとアナ。
赤ん坊を取り違えられたのでは？と苦悩します。
そして、スペイン戦争が家族に与えた課題もずっと残されたまま、、、。
「パラレルマザーズ」のあらすじ①同じ日に生まれた子供
【あらすじ①】
ジャニスはマドリッドで活躍する40歳の写真家だ。
ポートレートを撮影したことで考古学者アルトゥーロと知り合い、
「スペイン内戦で殺害された自分の曾祖父ら9人の男性の集団墓地を発掘することは可能か？」
と頼んでみた。
二人は親しくなり、ジャニスは
アルトゥーロの子供を妊娠するが、彼には病気の妻がいるため独りで育てることに決めた。
ジャニスが病院で同室になったアナは17歳で、
どちらもシングルマザーを選択し、二人は同じ日に娘を産んだ。
ジャニスは娘にセシリアと名付け愛して育てた。
赤ん坊に会いに来たアルトゥーロが、どちらにも似ていないことを気にしてDNA鑑定を受けるよう勧め、
ジャニスは、とんでもないと怒ったが、念のためにテストキットを取り寄せ、検査した。
しかし、自分とセシリアは生物学上の母娘ではない驚きの結果がまっていた。
ジャニスは悩みながらアルトゥーロともアナとも連絡が取れないよう携帯電話の番号を変えた。
「パラレルマザーズ」のあらすじ②アナとの再会
【あらすじ②】
セシリアをベビーシッターに預けてジャニスは仕事に復帰した。
ある日、カフェに入るとウェイトレスとして働くアナと再会した。
アナの娘アニータは乳児の頃に突然死したという。
その晩、家を訪ねてきたアナにジャニスは料理を教え、アナがセシリアのベビーシッターとして住みこむことを提案した。
こっそり、アナとセシリアのDNA鑑定の検査も行ってみた。
ジャニスは自分の子供時代の話をアナにした。
27歳で亡くなった母親はシングルマザーで、5歳から母方の祖母に育てられた。
ジャニスとアナはキスをし、自然に惹かれ合っていった。
セシリアを連れて二人でアニータの墓参りをしたとき、
アナがクラスメートにレイプされ、子供の父親は3人の誰か分からないと告白した。
また、彼女の両親は離婚し、アナは父親に育てられ、妊娠後に母親テレサの元へ送られた。
しかし、テレサは女優のキャリアが捨てられず、アナは独りでアニータを育てた。
「パラレルマザーズ」のあらすじ③アナに真実を話す！
【あらすじ③】
突然アルトゥーロが家に訪ねてきた。
ジャニスの田舎の集団墓地の発掘を始めると言う。
そして奥さんとの別居が進んだらしい、ジャニスとのことを前向きに考えてくれている。
それを聞いてジャニスは新しい携帯番号を彼に教えた。
アルトゥーロと外で会って以来、アナが彼にジェラシーを感じ、二人はけんかになった。
そこでジャニスは、検査の結果をアナに見せることにした。
自分がずっと思い悩んでいること、セシリアの母親が自分ではなく、アナだということを。
アナは驚いたが、すぐに自分の荷物をまとめてセシリアを抱いて母親のもとへ帰って行った。
突然の選択にジャニスはもう少し時間が欲しいと頼んだが、
エレベータで泣きながら二人を見送った。
セシリアにI love you very much と伝えながら。。。
ジャニスはひどく落ち込みアルトゥーロに連絡し、子供が取り違えられていたことを告白した。
アナからはジャニスを気遣う電話が入っていた。
「パラレルマザーズ」のあらすじと結末！曾祖父のお骨と対面
【あらすじと結末】
ジャニスはアルトゥーロの車で自分が育った田舎へ親戚を訪ね、墓の情報を集めた。
育ててくれた祖母は、スペイン戦争内乱で、
自分の父親が街の男の人たちと一緒に殺害され、戻ってこなかった話をしてくれた。
祖母はまだ赤ん坊で、父親は赤ん坊のガラガラオモチャを抱いて亡くなったらしい。
アルトゥーロの指揮のもと、考古学チームが調査の結果、集団墓地の場所を突き止めた。
今は石碑も何もない原っぱになっていた。
注意深く掘り進めると、横たわった9体の遺骨がそのままの形で姿をあらわした。
赤ん坊のガラガラを胸に抱いた遺骨もあった。
亡くなった9人を親族に持つ女性たちが、彼らの写真を持って発掘された墓を訪れその死を悼んだ。
ジャニスもアナとセシリアを伴ってそのお墓にいた。
ジャニスのお腹には新しい命が授かっていた。
（おしまい）
「パラレルマザーズ」の最後のメッセージ！名言を解説（エドゥアルド・ガレア―ノ）
【映画のラストに掲げられたエドゥアルド・ガレア―ノの残したメッセージ（名言）】
No History is Mute,
(歴史は黙っていない）
No Matter How much they Burn it,
（いくら燃やそうとしても）
No Matter How much they Break it,
（いくら壊そうとしても）
No Matter How much they Lie about it,
（いくら嘘をついても）
Human History Refuses to Shut it Mouth,
（人類の歴史はその口を閉ざすことはない）
EDUARDO GALEANO
（エドゥアルド・ガレア―ノ）
【エドゥアルド・ガレア―ノについて】
（1940年生まれ2015年亡くなる）は、
ウルグアイ人のジャーナリスト、歴史家で多くの著書を残し、翻訳されている。
ジャンルは、ドキュメンタリー、フィクション、ジャーナリズム、政治分析など多岐にわたる。
それらは、歴史に結びつけられた内容なのです。
※本映画の最後は、スペイン戦争内乱で殺害され、どこかに葬られ戻ってこなかった9人の男性のお墓を発掘し、そのお骨に子孫たちが対面しました。
その時に流れたのがエドゥアルド・ガレア―ノのメッセージです。
「パラレルマザーズ」の感想と考察！映画が伝えたいことは？
【感想と考察】
①同じ日に産んだ病院で娘を取り違えられ、苦悩する主人公ジャニスともう一人の母親アナ。
②祖母の父親が巻き込まれたスペイン戦争内乱に一つのけじめをつけたいジャニスと田舎の人たち。
映画はこの二つのテーマが交錯していたなあと思います。
●ジャニスとアナ
●ジャニスと彼
●アナと母親
それぞれの人間関係が複雑で、思い悩みながら解決を模索します。
①では、DNA鑑定で娘セシリアと母子関係がないことがわかるのですが、
アナが育てていた娘アニータ（ジャニスの娘）はすでに亡くなっていました。
●ジャニスはセシリアをアナに返した方がいいと分かっていても、簡単には気持ちが切り替えられなかったと思うのです。
●彼（アルトゥーロ）に妻がいることからシングルマザーを選択しますが、それは自分の母親と同じ選択だったことにも思いを馳せます。
●アナは離婚した両親の間で居場所を見つけられず、最後は娘セシリアを連れて母親との関係を取り戻そうとします。
それぞれが二人の娘の誕生と取り違えによって人生を見つめ直すことになりました。
愛し、育てた娘が自分の子ではなかったと認めるのはとても辛かったことでしょう。
ペネロペの演技力が素晴らしくて彼女の苦悩がひしひしと伝わってきました。
②では、スペイン戦争内乱で殺害され埋葬された9人の男性たちのこと
「スペイン戦争内乱で殺害され埋葬された曾祖父と街の男たち
9人が埋葬された共同墓地の発掘をやり遂げ弔うこと。」
ついにその願いが叶い、
埋葬された男性の子孫たちはようやく
帰ってこなかった9人の男性の死を悼むことができました。
ジャニスは最愛の娘を失い、あらためて自分の家族とのつながりを再認識したのだと思います。
今、ジャニスのお腹に赤ちゃんがいることは
「神様からの贈り物」のように思えてなりません。
この映画が伝えたかったこと。
「過去も今も未来も家族は一つであること」
ジャニスを育ててくれたおばあちゃんもそう願っていましたね。
そして、
「人類の歴史は真実を語る」
エドゥアルド・ガレア―ノの名言がピッタリの最後でした。
「パラレルマザーズ」の概要
【概要】
製作国：スペイン
公開：2021年9月（ヴェネツィア）
2022年11月（日本公開）
監督：ペドロ・アルモドバル
ジャンル：ヒューマンドラマ
主演：ペネロペ・クルス
※アルモドバル監督とペネロペ・クルスの他の作品には、
『オール・アバウト・マイ・マザー』1999年
『ボルベール（帰郷）』2006年があります。
「パラレルマザーズ」の受賞
【受賞】
＜第94回アカデミー賞＞ノミネート
●作曲賞
●最優秀女優賞（ペネロペ・クルス）
＜ベネティア国際映画祭＞
●金獅子賞ノミネート
●クィア獅子賞ノミネート
（クィア獅子賞＝LGBTや、クィアカルチャーを扱っている映画の中から
最高の作品に与えられる賞で、2007年に創設された）
●最優秀女優賞（ペネロペ・クルス）受賞
※本作品は高く評価され、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞などで作品賞を受賞しています。
また、ペネロペ・クルスは、数々の海外映画賞で主演女優賞を獲得しています。
「パラレルマザーズ」のキャスト
【キャスト】
●ジャニス＝ペネロペ・クルス
（主人公・写真家）
●アナ＝ミレーナ・スミット
（ジャニスの同室の17歳の妊婦）
●アルトゥーロ＝イスラエル・エレハルデ（ジャニスの恋人）
●テレサ＝アイタナ・サンチェス＝ヒホン（アナの母親）
●エレナ＝ロッシー・デ・パルマ
（ジャニスの友人）
※ペネロペ・クルスがトム・クルーズと共演した『バニラスカイ』の記事も書いています。
よろしければ、こちらからお読みください。
以上
（ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。）
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