こちらでは、映画『イニシェリン島の精霊』はどんな話?についてまとめています。
「アイルランドの精霊・バンシーは人の死を予告すると言われています。」
第79回ヴェネチア国際映画祭で脚本賞と最優秀男優賞を受賞。
監督は『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー。
主演はコリン・ファレルが贈るヒューマンドラマ映画。
アイルランドの孤島(イニシェリン島)の景色がとにかく美しい~
島の人々との人間関係にも注目のドラマ映画です。
映画『イニシェリン島の精霊』はどんな話なの?を、あらすじや見どころを結末までお伝えします。
この記事が、「イニシェリンの精霊」をもっと楽しんでいただくために、お役に立てれば嬉しいです。
映画「イニシェリン島の精霊」はどんな話?あらすじを結末まで!
時は1928年。
アイルランドの本土では内戦で騒々しくなっています。
舞台はアイルランドの孤島「イニシェリン島」
イニシェリン島は、大変小さな島で、人々が助け合って生きています。
主人公のパードリック(コリン・ファレル)が長年の友コルム(ブレンダン・グリーソン)から絶交を言い渡されるところから物語は始まります。
しかし、その理由が分かりません。
パードリックを支える賢い妹シボーン(ケリー・コンドン)と個性的なご近所さんドミニク(バリー・キオガン)が間に入りますが、コルムの怒りは険悪になっていきます。
一体何があったのでしょうか?
あらすじを結末まで解説します。
あらすじ(前半)
4人の主要人物の物語。
①パードリックとコルム
パードリック(コリン・ファレル)が
親友コルム(ブレンダン・グリーソン)に絶交を言い渡され思い悩む様子。
②妹シボーン(ケリー・コンドン)
聡明で美人の妹シボーンが
兄を心配しながら
自分の人生を高めるために島を出る決断をするまで。
③ドミニク(バリー・コーガン)
変わり者で頭がわるいと思われている。
ドミニクが父親の暴力に悩み耐えながら繊細な一面を見せる様子
これらに島民が絡みながら、進行する物語。
本土から聞こえてくる内戦の砲弾を気にしながら、、、。
私は特にこの①~③の主要人物たちの行方を気にしながら鑑賞しました。
死を知らせた伝承のバンシー(精霊)は、
島に住む預言者マコーミック婦人でした。
やがて彼女の言う通り、二つの死体(ロバとドミニク)が上がりました。
あらすじ(後半)
①パードリックとコルム
本当にいい人だなあ、と思えるパードリック。
コルムはどうして左指を二度も落としてまでパードリックを遠ざけようとしたのでしょうか?
指がなくてはこれ以上演奏できません。
左指がなければ、バイオリンの弦を押さえることはできません。
音楽家として致命傷です。
パードリックは音楽家としての限界を感じていたのではないでしょうか。
そして、コルムはパードリックを変わらず大事に思っていることも気になります。
最後は最愛のロバの死が、パードリックに憎しみの心を生みましたが、
まさか、コルムの家に火をつけるなんて!
信じられない行動です。
私はパードリックの変化がとても残念でした。
でも、
- コルムの犬を保護してから火をつけたこと、
- コルムが火事で死なずに生きていたこと
犬の世話をしてくれたお礼をパードリックに伝えた時には少し救われました。
②妹シボーン
兄を心配し、コルムとの仲を平和に保とうと奮闘したシボーン。
シボーンは、島にいては自分の人生の目的が達せられないと判断したのでしょう。
本島で図書館司書の仕事に就き、兄を呼び寄せようとします。
シボーンは本当に賢くて優しい娘だと感じました。
③ドミニク
ドミニクは、勇気をふり絞り、シボーンに告白しました。
「付き合わないかい?」
ずっとシボーンが好きだったようです。
パードリックは「悲しい知らせがある。ドミニクが足を滑らせて死んだようだ」とシボーンに手紙で伝えました。
わたしは、ドミニクは人生に絶望してしまったのかな?と思いました。
結末
パードリックがコルムの家に火をつける前に
あらかじめ時間を予告し、犬を出すよう伝えました。
愛犬は火事に巻き込まれないよう外に出されていました。
でも、コルムは中にいて椅子に掛けていました、
外には出ていなかったのです。
火事に巻き込まれなかったのでしょうか?
コルムが火事が広がる前に脱出できてよかった!
映画『イニシェリン島の精霊』見どころ
【見どころ】
- 本作は、2018年の映画『スリー・ビルボード』をおくり出したマーティン・マクドナー監督の作品です。
- 空と海と島、映像がとにかく美しい、ダークコメディも楽しめると良いでしょう。
- なぜ、突然、親友コルムは絶交を言い渡したのか?
主人公(コリン・ファレル)は気の毒な境遇ですが、彼の演技が素晴らしいです。
- 島の住民の人々の人間性も見どころです。特に、シボーンやドミニクに注目です。
なぜコルムは生きていた?(映像で映ったのは右手だけ、無くした指は左手)
火事の翌日、全焼はしていませんが焦げたコルムの家がありました。
でも、家の前の海岸にコルムが立って海を見ている姿があり私はホッとしました。
顔にはすすが付いており、コルムの愛犬が嬉しそうに駆け寄りました。
映ったコルムの指は右手で、愛犬の頭をなでました。
無くした左指は映りませんでしたね。
私は、コルムが火事が広がる前に脱出できてよかったなと心底うれしいです。
これで、コルムが巻き込まれて亡くなっては、悲惨すぎます。
「この火事でおあいこだな」とコルム。
「あんたが生きてるからおあいこじゃない」とパードリック。
でも、パードリックも本当は嬉しそうでしたネ。
コルムがパードリックを遠ざけたわけは?
「お前が嫌いになった!」
そう言って突然パードリックとの友情を止めたコルム。
島が大好きでその生活を楽しむパードリックと、このままの人生ではいけないと疑問に思ったコルム。
ふたりのすれ違いはこの思考の違いから生まれました。
人生に限りがあることに焦り、このまま年を取りたくない。
自分が弾くバイオリンで作曲し、自分の人生に何か残したいと言います。
お前とパブでする世間話は時間の無駄だとパードリックに説明しました。
それにしても、パードリックは納得がいきませんし、観ていた私も、何か別に言えない深いわけがあるのでは?
と思って続きを待ちました。
もともと思慮深いコルムですが、自分の残りの人生を考え、生活スタイルを変えるにはパードリックとの関係を断つしかないとは、あまりにも極端な対応です。
まるで上手くいかない自分の人生を
パードリックのせいにして逃げているようです。
ところが
パードリックが事故(警官に殴られた)に遭遇したときは優しく介抱して助けました。
コルムはパードリックのことは以前同様に好きなのです。
それでも
自分が残りの人生を意義ある過ごし方をするためには、大好きなパードリックとの心地がいい関係を断ってまで臨もうとしたのではないでしょうか?
なんて不器用な対応でしょう。
パードリックが話しかけて来て、
上手く距離が取れないからからと言って、指まで切り落としたのですから。
コルムが指を切り落としたわけは?
「パードリックとの距離を上手く保てないときは俺の指を切り落とす」
なぜ、そんなことをする必要があったのでしょうか?
指を切り落とすのは、パードリックと話したくないからではなく、
自分が音楽家として、自信をなくしていたからでしょう。
左指でバイオリンが押さえなければ、音を作れません。
パードリックにはきっかけになってもらったのです。
人生に絶望しながら、残りの人生を有意義に過ごしたい音楽、作曲で何かを残したい!
焦る気持ちを大好きなパードリックとの関係を止めて、退路を断つ。
そこまで自分を追い込んで結果を出すことに集中する。
思慮深いコルムの決断でした。
ただ、パードリックが話しかけてきたから指を切り落としたのは、これで音楽家として大成できなくてもパードリックが悪いからだと言い逃れができます。
上手くいかなかった理由をパードリックのせいにできます。
コルムはきっとそこまで深く考えて行動したわけではないでしょうが、心のどこかで逃げたかったんだと感じました。
シボーンが島を出たわけは?
コルムが左指を一本落としてパードリックの家に投げつけた時、シボーンは箱に入れた指を返しにコルムを訪ねました。
そのときの会話で、コルムは「君なら分かるはずだ」と言います。
コルムはシボーンが自分同様、思慮深いことを承知しています。
この島で残りの人生について自分を変えたいというコルムに、「この島には退屈しかないわ。」とシボーンは答えます。
島は、シボーンにとっても人々の関係が深すぎて、付き合いにくい環境なのです。
はじめは、鬱かな?と思ったコルムの頑(かたくな)な態度に触れ、
もうコルムにかかわってはダメだと兄に忠告します。
そして、読書好きのシボーンに届いた本土での図書館司書の採用通知。
兄のことを心配しつつ、島を出る決意をしたシボーン。
ドミニクからの告白には驚いたようですが、傷つけないように丁寧に断りました。
シボーンは向上心のある聡明な女性です。
自分の人生の高みを目指して島から出たのです。
同様に人生の質を高めたいと思いながら、島の生活にしがみつくコルムとの違いがそこにあります。
映画『イ二シェリン島の精霊』の感想
【感想】
アイルランドの離島の景色は、
空気が澄んでいることが映像越しに伝わってくるほど美しかったです。
最後まで、コルムが突然に親友のパードリックを拒絶する理由がハッキリしませんでした。
本島から聞こえる砲弾を気にしながら、でも、いつまでやってるんだ!と怒りながら、島民は自分たちの暮らしに集中します。
小さな島の中の生活は退屈で、人間関係は濃密です。
毎日午後2時に連れだってパブで世間話を楽しむ。
心優しいパードリックは典型的な島の人。
思慮深いコルムは残された限りある人生に焦りを感じました。
でも、コルムが自分の残りの人生を音楽・作曲に集中するためにパードリックと絶交までする必要はあったのでしょうか?
指まで落として拒絶する行動もよく分かりませんでした。
はじめは鬱なのでは?と疑ったパードリックとシボーンでしたが、コルムはパードリック以外の人とは普通に付き合うのですから。
でも、コルムは人間性が変わってしまったわけではありません。
パードリックが警官(ドミニクの父)に殴られて倒れたときに、以前同様優しく助け起こしましたよね。
コルムはパードリックを変わらず好きだなんだなと思ったシーンでした。
そして、コルムはシボーンのように島から出ることは考えられない人なのです。
複雑なコルムの気持ちは二つあると思います。
1)自分自身へのいら立ちをパードリックのせいにして逃げる気持ち。
2)大好きなパードリックとの付き合いを止め、残りの人生を充実させることに集中するために退路を断ち、自分に厳しくすること。
最後は、海辺でパードリックとコルムの会話で終わります。
「内戦は終わりかな?」
コルムは本島の砲弾が止んだことを気にしましたが、
「どうにも終わりにできないこともある」
そう答えたパードリックは、自分たちふたりの内戦は終わらず「どうせまた始まる」と言いたかったのではないでしょうか。
小さなことで行き違い、こじれてしまった間柄はどんどんうまくいかなくなるものだ。
まるで、本土の内戦のように。
わたしは、そんな解釈をしました。
イニシェリン島の精霊』映画 海外の反応
【海外の反応】
10月21日、欧米で公開されました。
評論家の評価は5点中4,5~5が多くみられます。
2022年観た映画の中で一番面白い
という人から、
悲しみの中にいる人は観ないでくださいと言う人も。
特に島や海、空の景色が美しいという感想が多いですね。
コリン・ファレルとブレンダン・グリーソンのパフォーマンスがとても良い。
単純な映画に見えて、そうではない映画。
道徳心、忠誠心、人間の究極の目的と生きる意味を追求した作品。
住民の生活は悲惨、どんどん陰謀に巻き込まれていく、、、。
最後は、観衆全員が唖然とする結末だった。
アイルランド内戦についての絡みもあります。
オスカー獲得間違いなし!という高い評価もちらほら。
(追記11月)
●コルムはパードリックを嫌っているのではなく、自分自身を憎んでいたのではないか?
●かつて愛していた人から突然拒絶されたとき、どれほどの混乱が起きるのかを見せつけられた。
●「お互いが一緒に暮らすことはできない」というのは、
アイルランド内戦の歴史を持ち出し、島全体の紛争を代役として見せたのではないか?
●パードリックとコルムの主人公の他、ドミニクの存在も重要だった。
悲劇的なドミニクの演技も素晴らしい。
彼は、島の人々が思うような愚かな人物ではない。
子供時代のつらい経験によって一風変わっているが、本当は機知に富んだ知的な人物だった。
●パードリックの妹、シボーンの立ち位置がポイント。
彼らには、相手を憎むか思いやるかの選択肢があったが、
シボーンは後者である。
親切で、愛情と感謝を持って生きている女性。
●コルムの二度目の告白の時の演技に引き込まれた。
●パードリックは拷問されるように気の毒な立場に陥るが、観た人はみな彼に共感する。
(追記12月)
●アイルランド西部のロケ地で撮影され、
野性的な自然が素晴らしく、訪れてみたい場所。
●映画全体は素晴らしかった。
始まりから3分の1まで楽しんだ(気さくな冗談もあった)が、
映画はだんだん暗くなり、
最後はパードリックとコルムの両方に嫌悪感を抱いた。
●コルムが指を切り落とすシーンは、音楽家としての未来を捨て
自分を解放したのではないか?
●コルムが指を切り落とすシーンは、脱線したのではないか?
そのシーンとその後の行動にゾッとした。
●大好きな映画
演技・脚本・撮影映像・何層もの深いストーリーが良かった。
●司祭を演じたデヴィッド・ピアースの演技は
短いシーンだが、印象に残った。
●ロバが死んだことにより、平和解決の希望はなくなった。
●妹・シボーンは無意味な暴力に恐怖を覚え、去ることを決めた。
兄(パードリック)にも同様にすすめたが、拒絶されてしまった。
●パードリックの優しい性格が自分を犠牲にした。
結果、怒りを持つようになり自分の人生をダメにした。
●老婦人が重く感じた。
●映画全体は好きだが、
結末には戸惑い、残念、不満だった。
以上、(海外の反応より)
映画『イニシェリン島の精霊』概要
【概要】
製作:2022年
イギリス・アメリカ・アイルランド(合作)
公開:(日本)2023年1月27日
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:マーティン・マクドナー
脚本:マーティン・マクドナー
原作:The Banshees of Inisherin
主演:コリン・ファレル
※マーティン・マクドナー監督の前作『スリー・ビルボード』の記事も書いています。
よろしければ、こちらからお読みください。
映画『イニシェリン島の精霊』キャスト
【キャスト】
●コリン・ファレル(パードリック役)
●ブレンダン・グリーソン(コルム役)
●ケリー・コンドン(シボーン役)
●バリー・コーガン(ドミニク役)
※コリン・ファレルとブレンダン・グリーソンはマクドナー監督と『ヒットマンズ・レクイエム』でもタッグを組んだ3人です。
映画『イニシェリン島の精霊』受賞
【受賞】
〈2022年
第79回ベネチア国際映画祭コンペティション〉
において
●脚本賞:マーティン・マクドナー
●ポルピ杯(最優秀男優賞):コリン・ファレル
この記事が、「イニシェリンの精霊」をさらに深く知るための参考になれば嬉しいです。
※主演のコリン・ファレルは
映画『アフター・ヤン』で、心優しい父親を演じました。
よろしければこちらから記事をご覧ください。
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